差し押さえで給料はいくら残る?手取り別の早見表と口座・給料日の注意を条文で

裁判所から書類が届いた、または督促を放っておいたままで、次の給料日にいくら手元に残るのかが分からない。給料が全部持っていかれるのではないか、口座の残高まで消えるのではないか。そう考えて検索した人に向けて書いています。

先に答えを書きます。借金(貸金・カード・ローン)の取り立てで給料が差し押さえられる場合、会社から差押えの相手に回るのは、手取りの4分の1までです。手取りが月44万円を超える人だけは、33万円を残してそれを超える部分がすべて対象になります(民事執行法152条1項と同法施行令2条)。全額が持っていかれることは、借金の差押えではありません。

ただし、例外が三つあります。養育費などの差押えは2分の1まで広がること、税金の滞納は別の法律で計算が変わること、そして給料が口座に振り込まれた後は「給料」ではなく「預金」として扱われ、4分の1の枠が直接はかからないことです。この記事では、手取り別の早見表、差押えが始まるまでの書類と期間、口座に入った後の守り方、差押えが止まる場面を、2026年11月8日に開いた条文と裁判所の公式ページだけで順に示します。

差し押さえられるのは手取りの4分の1:条文の読み方

給料の差押えの範囲を決めているのは、民事執行法152条1項です。条文はこう書いています。

次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。(民事執行法152条1項。2号に「給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権」)

条文が決めているのは「差し押さえてはいけない部分」です。4分の3は差し押さえてはいけない、だから差し押さえられるのは残りの4分の1、という順番で読みます。カッコ書きの「政令で定める額」は、民事執行法施行令2条1項1号で、毎月払いなら33万円と決まっています。4分の3が33万円を超えるのは、手取りが44万円を超えたとき(44万円×4分の3=33万円)です。そのため、手取り44万円を超える人は「33万円だけは守られ、残りは全部差し押さえられる」という形に切り替わります。

では「手取り」とは何か。裁判所が公開している給料差押え用の書式(差押債権目録)には、差し押さえる範囲が次のように書かれています。

給料(基本給と諸手当。ただし,通勤手当を除く。)から所得税,住民税及び社会保険料を控除した残額の4分の1(ただし,上記残額が月額44万円を超えるときは,その残額から33万円を控除した金額)(裁判所「差押債権目録(給料債権及び退職金債権-民間会社用)」)

ここでいう手取りは、基本給と手当の合計から通勤手当を除き、所得税・住民税・社会保険料だけを引いた額です。給料明細の「差引支給額」とは一致しないことがあります。たとえば財形貯蓄、社内預金、会社からの借入れの返済、組合費などが天引きされている人は、その分は差引支給額から引かれていても、差押えの計算では引かれません。明細を見て計算するときは、総支給から通勤手当・所得税・住民税・社会保険料だけを引いた数字を使ってください。

なお、厚生労働省の労働条件Q&A「給料の差し押さえとは、実際どうなるのでしょうか?」も、4分の3が差押禁止であること、月44万円を超える場合は33万円が差押禁止額であることを、同じ条文を引いて説明しています。

手取り15万・20万・25万・30万・45万円の早見表

上の条文と書式の決まりに当てはめて、毎月払いの給料で計算しました。左の「借金など」が貸金・カード・ローン・立替金などの一般の債権、右の「養育費など」が次の節で説明する扶養に関わる債権です。

手取り(月) 借金など:差し押さえられる上限 借金など:手元に残る額 養育費など:差し押さえられる上限 養育費など:手元に残る額
15万円 3万7,500円 11万2,500円 7万5,000円 7万5,000円
20万円 5万円 15万円 10万円 10万円
25万円 6万2,500円 18万7,500円 12万5,000円 12万5,000円
30万円 7万5,000円 22万5,000円 15万円 15万円
44万円 11万円 33万円 22万円 22万円
45万円 12万円 33万円 22万5,000円 22万5,000円
70万円 37万円 33万円 37万円 33万円

計算のもと:民事執行法152条1項・3項、同法施行令2条1項1号、裁判所の差押債権目録の書式。手取り=給料(通勤手当を除く)-所得税・住民税・社会保険料。

手取り45万円の行を見てください。4分の1なら11万2,500円ですが、44万円を超えているので計算が切り替わり、45万円-33万円=12万円が上限になります。ここが「何パーセント」と聞かれたときに一言で答えにくい理由です。手取り44万円までは25%、それを超えると33万円を超えた部分の100%、と覚えるのが正確です。

表の金額はあくまで「1か月で取られる上限」です。差押えは、請求額(元金・利息・遅延損害金・手続費用)に届くまで、毎月の給料日ごとに続きます。裁判所の書式も「本命令送達日以降支払期の到来する下記債権にして、頭書金額に満つるまで」と書いており、一度きりで終わる手続ではありません。たとえば手取り20万円で請求額が60万円なら、毎月5万円ずつ、計算上は12回の給料日にわたって続きます。

ボーナス・退職金・日払いの場合

支払いの形 差押えが禁止される部分 根拠
賞与(ボーナス) 税金と社会保険料を引いた額の4分の3。ただし上限33万円 152条1項、施行令2条2項
退職金 4分の3(上限額の定めなし) 152条2項
毎半月払い 4分の3。ただし上限16万5,000円 施行令2条1項2号
10日ごと払い 4分の3。ただし上限11万円 施行令2条1項3号
日払い 4分の3。ただし上限1日1万1,000円 施行令2条1項5号
週払いなどその他の期間 4分の3。ただし上限は1万1,000円×その期間の日数(週払いなら7万7,000円) 施行令2条1項6号

日払いや週払いのアルバイトでも、4分の1の考え方は変わりません。給料の支払いの形がどうであっても、法律上は「給料」として同じ枠で守られます。退職金だけは上限額がないため、高額の退職金でも差し押さえられるのは4分の1までです。

養育費・婚姻費用は2分の1まで広がる(152条3項)

152条3項は、債権者が「前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権」を請求する場合は、1項・2項の「四分の三」を「二分の一」と読み替える、と定めています。前条とは151条の2で、その1項各号に並ぶのは、夫婦間の協力・扶助、婚姻費用の分担、子の監護(養育費)、親族間の扶養の四つの義務です。

裁判所の「養育費に基づく差押え」の案内ページは、この読み替えを具体的な額で書いています。

差押えの範囲は給与差押えの場合、債務者の給与から税金等を除いた手取額の2分の1(月給から税金等を除いた手取額で66万円を超える場合には、33万円を除いた金額)が上限となります。(裁判所「債権執行(養育費等に基づく差押え)」)

早見表の右側の2列は、この決まりで計算したものです。33万円の上限はそのまま残るので、2分の1が33万円を超える手取り66万円超から、計算が「33万円を超えた部分すべて」に切り替わります。

養育費にはもう一つ違いがあります。151条の2は、まだ支払日の来ていない将来の分についても、一度不払いがあれば先に差押えを始めてよいとしています。借金の差押えが「今までに払っていない額」で止まるのに対し、養育費の差押えは毎月の支払いが続くかぎり給料から引かれ続けることがあります。また、後で触れるとおり、養育費は自己破産をしても免除されません(破産法253条1項4号)。

差し押さえまでの流れ:債務名義から会社に書類が届くまで

返済が遅れたからといって、債権者がすぐに給料を差し押さえることはできません。民事執行法22条は、強制執行は「債務名義」によって行うと定めています。債務名義とは、裁判所や公証人が作った「この人はこの額を払う義務がある」という書面のことで、代表的なものは次のとおりです。

債務名義の種類 どうやってできるか 22条の号
確定判決・仮執行宣言付きの判決 訴えを起こされ、判決が出る。答弁書を出さずに欠席すると、相手の言い分どおりの判決になりやすい 1号・2号
仮執行宣言付きの支払督促 簡易裁判所から支払督促が届き、異議を出さずに期間が過ぎると、債権者の申立てで仮執行宣言が付く 4号
執行証書(公正証書) 契約時などに、公証人の前で「払わなければ強制執行を受けてよい」という条項を入れた公正証書を作っている 5号
和解調書・調停調書など 裁判所での和解や調停で分割払いを約束し、その約束を守れなかった 7号(確定判決と同一の効力)

公正証書は、裁判を経ずにいきなり差押えへ進める書面です。借りたときに公正証書を作ったかどうか分からない人は、契約書の控えを確かめてください。逆に、普通の消費者金融やカードの契約だけで公正証書がない場合は、差押えの前に必ず裁判所から訴状か支払督促が届きます。それを放っておかないことが、差押えを避ける最初の分かれ目です。

債務名義ができた後の流れを、裁判所の「債権執行(債務名義に基づく差押え)」の案内と条文で並べると、次のようになります。

段階 何が起きるか 根拠
1. 申立て 債権者が、原則として債務者の住所地の地方裁判所に申し立てる。手数料は原則4,000円と郵便料 裁判所の案内
2. 差押命令 裁判所は債務者も会社も呼ばずに(審尋しないで)差押命令を出す。本人に言い分を聞く機会はこの段階ではない 145条2項
3. 会社への送達 差押命令が会社(第三債務者)に届いた時点で差押えの効力が生じる。本人にも同じ命令が届く 145条3項・5項
4. 会社への質問 債権者が求めれば、会社は2週間以内に、給料があるか、ほかに差押えがあるかなどを裁判所に答える 147条1項
5. 取立て 本人に命令が届いてから4週間が過ぎると、債権者は会社から直接受け取れる(養育費などを含む場合は1週間) 155条1項・2項

債権者が陳述催告を申し立てていれば、裁判所書記官は差押命令を会社に送るときに、あわせて回答を求めます(147条1項。4の質問)。会社は「第三債務者」と呼ばれ、差押命令によって本人に差し押さえられた部分を払うことを禁じられます(145条1項)。つまり、給料の差押えは会社の経理や人事を通る手続で、会社に知られずに進むことはありません。

「1週間」と「4週間」の食い違いに注意してください。2026年11月8日に開いた厚生労働省の労働条件Q&Aは、差押命令が労働者に送達されて「1週間を経過すれば」会社から取り立てられると説明しています。一方、現在の民事執行法155条2項は、給料の差押え(養育費などを含まない場合)は「四週間」と定めており、裁判所の案内もQ&Aも「給料の差押えの場合については、養育費などを請求する場合を除いて4週間」と書いています。期限を数えるときは条文の4週間で考えてください。

この4週間は、債務者にとって意味のある時間です。次の節で説明する範囲変更の申立ては、債権者が会社から支払いを受ける前にしなければならないと裁判所は案内しています。差押命令が届いた日を記録し、そこから4週間以内に動けるかどうかが、その月の給料を守れるかを左右します。

債権者が2社以上いる場合

複数の債権者が同じ給料を差し押さえても、4分の1の枠が2倍になるわけではありません。152条が守っているのは給料そのものの4分の3なので、差し押さえられる部分の合計は4分の1のままです。差押えが重なって合計が給料の差押え可能額を超えると、会社は差し押さえられた額を法務局に供託しなければならず(156条2項)、裁判所がそのお金を債権者に分けます。債権者が増えると、1社あたりの回収が遅くなり、差押えが続く期間が長くなります。

給料日に口座へ振り込まれた後は「預金」として扱われる

「差し押さえ 給料 口座」と検索する人が多いのは、ここに落とし穴があるからです。152条が守っているのは、会社に対して給料を受け取る権利(給料債権)です。会社が給料を振り込み、銀行口座に入った瞬間から、そのお金は法律上「銀行に対する預金の払戻しを受ける権利(預金債権)」に変わります。152条1項の各号には預金が書かれていないため、口座に入った給料には4分の3の枠が直接はかかりません。

裁判所は差押債権目録の書式を、給料用とは別に預貯金用も用意しています。預金を差し押さえられると、差押命令が銀行に届いた時点の残高が、請求額に達するまで対象になります。給料日の直後に預金の差押えが重なると、振り込まれたばかりの給料がほとんど引き出せなくなる、ということが起こり得ます。

ここで比べておきたいのが、手元の現金です。民事執行法131条3号は「標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」を差し押さえてはならない動産とし、施行令1条はその額を66万円と定めています。財布や自宅にある現金なら66万円までは守られるのに、口座の中にあると同じ枠がない。この差が、口座への差押えが重く感じられる理由です。

口座を差し押さえられたときの手段:範囲変更の申立て(153条)

口座に入った給料に枠がないことを補うのが、民事執行法153条の「差押禁止債権の範囲の変更」です。条文は次のとおりです。

執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。(民事執行法153条1項)

裁判所の民事執行Q&Aは、この制度を「差押えによって債務者の生活に著しい支障が生じる場合(例えば、生活保護費や年金の振込口座が差し押さえられ、生活が成り立たなくなる場合)など」に使う手続と説明しています。給料の振込口座も同じ考え方で申し立てることができ、給料そのものの差押え(4分の1)が生活に重すぎる場合にも使えます。

項目 裁判所の案内に書かれていること
申し立てる先 差押命令を出した裁判所
期限 債権者が第三債務者(銀行・会社)から支払いを受ける前
書く内容 差押命令の事件番号、どう変えたいか(申立ての趣旨)、変更が必要な事情(理由)
出す資料の例 陳述書、家計表(申立前2か月分)、源泉徴収票か課税(非課税)証明書、給与明細書(申立前2か月分)、通帳のコピー(過去1年分)、世帯全員と同居者全員の住民票(3か月以内)など
結果 申し立てれば必ず認められるわけではない。認められても借金そのものは減らない

通帳のコピーを1年分求められるのは、口座の中のお金がどこから来たのか(給料か、年金か、ほかの入金か)を裁判所が確かめるためです。給料の振込専用に使っている口座で、入金のほとんどが給料だと示せれば、申立ての理由を説明しやすくなります。申立てと同時に、裁判所が結論を出すまで銀行や会社に支払いを止めるよう命じることもできます(153条3項)。

差押命令には、裁判所書記官が送達の際に、153条の申立てができることなどを教える決まりがあります(145条4項)。届いた書類の中に、この申立てについての説明が入っていないか確かめてください。

差し押さえが止まる場面:完済・取下げ・自己破産・個人再生

給料の差押えは、請求額に届くまで続くのが原則です。途中で止まるのは、次の場面です。

場面 どう止まるか 根拠
完済 請求額と執行費用を受け取り終えると、差押えは目的を果たして終わる。債権者は取立(完了)届を出す 155条3項・4項、裁判所Q&A
取下げ 債権者が取下書を出せば終わる。分割払いの話し合いがまとまったときなど 裁判所Q&A(取下書の書式)
退職 差し押さえる給料がなくなる。ただし書式上、未回収分は退職金の4分の1に及ぶ 裁判所の差押債権目録
自己破産の申立て〜開始決定 申立て後、開始決定までの間は中止命令を求められる。開始決定があれば新たな強制執行はできず、すでにある差押えは効力を失う 破産法24条、42条1項・2項
自己破産で同時廃止になった場合 免責の申立てについての裁判が確定するまで強制執行は中止され、免責許可が確定すると効力を失う 破産法216条、249条1項・2項
個人再生の申立て〜開始決定 申立て後は中止命令を求められる。開始決定があれば再生債権による強制執行は中止し、再生計画の認可が確定すると効力を失う 民事再生法26条、39条1項、184条

自己破産の場合

破産法42条1項は、破産手続開始の決定があると「破産財団に属する財産に対する強制執行」はできないとし、2項で、すでにされている強制執行は「破産財団に対してはその効力を失う」と定めています。開始決定の後に働いて得た給料は、破産財団(債権者に分けるために集める財産)には入りません(破産法34条1項は、開始の時に持っていた財産を破産財団とする)。それでも、借金の債権者は「破産手続によらなければ、行使することができない」(100条1項)ため、手続の外で給料を差し押さえ続けることはできません。

財産がほとんどない人の多くは、開始決定と同時に手続を終える「同時廃止」になります(216条1項)。この場合に給料の差押えを止めているのが249条です。免責の申立てがあり同時廃止の決定があれば、免責についての裁判が確定するまで強制執行は中止され(249条1項)、免責許可が確定すると、中止していた手続は効力を失います(同2項)。

ただし、免責されない債権があります。破産法253条1項は、税金など(1号)、悪意で加えた不法行為の賠償(2号)、養育費や婚姻費用など(4号)を免責の対象から外しています。これらは、手続が終わった後に改めて給料を差し押さえられる可能性が残ります。自己破産を選んだときの生活への影響は自己破産のデメリットは何年か、資格・保険・家族への影響を条文で整理した記事にまとめています。

個人再生の場合

民事再生法39条1項は、再生手続開始の決定があったとき、再生債権に基づく強制執行で「既にされているもの」は中止する、と定めています。中止した手続は、再生計画の認可決定が確定すると効力を失います(184条)。申立てから開始決定までの間に給料日が来る場合は、26条1項2号の中止命令を裁判所に求めることになります。中止の後は、再生計画で決まった額を、計画どおりに払い続けることが前提です。手続の途中でお金の工面がどう制限されるかは、個人再生中に借りられるかを申立てから完済まで5段階で確かめた記事で扱っています。

任意整理では法律上は止まらない

任意整理は裁判所を通さない話し合いなので、破産法や民事再生法のような「強制執行を止める条文」はありません。すでに差押えが始まっている債権者と任意整理の話し合いをする場合、止めるには債権者に取下書を出してもらうしかなく、それを和解の条件に入れるかどうかは相手次第です。差押えまで進んだ債権者が分割に応じるかどうかは個別の判断になります。任意整理で月々いくら払うことになるかの目安は任意整理は何年で返すか、36回・60回の月額を計算した記事で示しています。

税金の滞納による差押えは計算のしかたが違う

所得税などの国税を滞納したときの給料の差押えは、裁判所を通さない「滞納処分」で行われ、根拠は民事執行法ではなく国税徴収法76条です。判決などの債務名義は要らず、税務署が自ら差し押さえます。差押えが禁止される額の計算は、4分の1ではなく、次の合計です。

差押えが禁止される部分(月額) 根拠
その給料から引かれる所得税・住民税・社会保険料 国税徴収法76条1項1〜3号
本人について10万7,000円、生計を同じくする親族1人につき4万8,000円を加算 同4号、国税徴収法施行令34条
(給料-上の合計)×20%。ただし4号の額の2倍まで 同5号

手取り(給料から所得税・住民税・社会保険料を引いた額)が同じでも、結果は民事の差押えと大きく変わります。一人暮らしの場合と、扶養する家族が1人いる場合で比べました。

手取り(月) 借金の差押え(4分の1) 税金の滞納処分:本人のみ 税金の滞納処分:親族1人
20万円 5万円 7万4,400円 3万6,000円
25万円 6万2,500円 11万4,400円 7万6,000円
30万円 7万5,000円 15万4,400円 11万6,000円

計算例:手取り25万円・本人のみ=禁止額10万7,000円+(25万円-10万7,000円)×20%=13万5,600円、差押え可能額=25万円-13万5,600円=11万4,400円。

一人暮らしでは、税金の滞納処分のほうが借金の差押えより多く取られます。家族がいると、守られる額が1人4万8,000円ずつ増えるため、手取りが低いほど税金のほうが少なくなることもあります。「4分の1しか取られない」という説明は、税金の滞納には当てはまりません。また、破産法253条1項1号のとおり、税金は自己破産でも免除されません。

差し押さえの前に、何を確かめればよいか

給料の差押えは、最後の段階でいきなり起きるものではありません。何か月も返済が止まり、一括請求、訴状か支払督促、債務名義、差押命令という順に段階を踏みます。返済の遅れがどう信用情報に残り、どの段階で一括請求に変わるかは、長期延滞中に借りられるかと延滞の記録が消えない理由を確かめた記事で扱っています。いま自分がどの段階にいるかで、取れる手は変わります。

いま手元にあるもの 確かめること
督促状・一括請求の通知だけ まだ債務名義はない(公正証書を作っていなければ)。差押えの前に必ず裁判所の書類が来る
訴状 答弁書の提出期限。欠席すると判決が出て債務名義になる
支払督促 受け取ってから異議を出せる期間。異議を出すと通常の裁判に移る
差押命令(本人あて) 本人に届いた日。そこから4週間で債権者が取り立てられる。範囲変更の申立てはその前に
銀行から差押えの連絡 口座の入金の内訳(給料か、年金か)。範囲変更の申立てで、どの資料を出せるか

訴状や支払督促は、裁判所から届きます。封を開けずに置いておいても、期限は進みます。開封して、いつまでに何を出せばよいかを確かめることが先です。

給料の差押えで覚えておく数字は三つです。借金なら手取りの4分の1(手取り44万円超は33万円を超える部分)、養育費などなら2分の1(66万円超は33万円を超える部分)、そして本人に命令が届いてから債権者が取り立てられるまでの4週間です。

差押えの枠が守っているのは「会社から受け取る前の給料」で、口座に入った後のお金は153条の申立てで守る必要があります。差押命令が届いた日を書き留め、給料日と4週間の期限を並べてみてください。その日付が、次に何をすべきかを決めます。

よく検索される質問

給料は全額差し押さえられることがありますか?

借金(貸金・カードなど)の差押えで給料が全額取られることはありません。民事執行法152条1項で手取りの4分の3は差押えが禁止され、手取りが44万円を超えても33万円は残ります。ただし、給料が口座に振り込まれた後に預金として差し押さえられると、口座の残高がまとめて対象になることがあります。その場合は153条の範囲変更の申立てを検討します。

給料の何パーセントが差し押さえられますか?

手取り44万円までは25%(4分の1)です。44万円を超えると「33万円を超えた部分すべて」に計算が変わるので、割合では言い表せません。養育費などは50%(2分の1)で、手取り66万円を超えると33万円を超えた部分すべてになります。税金の滞納処分は国税徴収法76条の別の計算になります。

給料明細の差引支給額で計算してよいですか?

差し押さえの計算に使う手取りは、給料(通勤手当を除く)から所得税・住民税・社会保険料だけを引いた額です。財形貯蓄、社内ローンの返済、組合費などの天引きは引かれないため、差引支給額より大きくなることがあります。

差押えが始まるのはどの給料日からですか?

差押えの効力は、差押命令が会社に届いた時点で生じます(145条5項)。その後に支払日が来る給料から対象になります。債権者が実際に会社から受け取れるのは、本人に命令が届いてから4週間が過ぎた後です(155条2項。養育費などを含む場合は1週間)。

差押えは何か月続きますか?

請求額(元金・利息・遅延損害金・手続費用)に届くまで、給料日のたびに続きます。期間は「請求額÷毎月の差押え額」でおおよそ見積もれます。途中で止まるのは、完済、債権者の取下げ、自己破産や個人再生の手続などです。

出典(いずれも2026年11月8日に確認):
民事執行法(22条・131条・145条・147条・151条の2・152条・153条・155条・156条)e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004
民事執行法施行令(1条・2条)e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/355CO0000000230
破産法(24条・34条・42条・100条・216条・249条・253条)e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075
民事再生法(26条・39条・184条)e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225
国税徴収法(76条)e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000147
国税徴収法施行令(34条)e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334CO0000000329
裁判所「債権執行(債務名義に基づく差押え)」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_08/index.html
裁判所「債権執行(養育費等に基づく差押え)」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_09/minzi_26_01/index.html
裁判所「裁判手続 民事事件Q&A」(給料差押え・取立て・差押範囲変更)https://www.courts.go.jp/saiban/qa/qa_minzi/index.html
裁判所「差押債権目録」書式(給料債権及び退職金債権-民間会社用)https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_minzi_sikkou/saiken_saimu/sasiosae/index.html
厚生労働省「給料の差し押さえとは、実際どうなるのでしょうか?」https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/chingin/q10.html