時効援用を自分でする費用は1,420円から|5年・10年の数え方と止まる事由

何年も前に返せなくなった借金について、今になって請求書や債権回収会社からの通知が届いた。あるいは、ずっと連絡が来ないまま年月だけが過ぎて、「もう時効では」と気になっている。そういう人が「時効援用」と調べると、事務所の案内がずらりと並びます。けれど、自分で手続きをするとして実際に郵便局で払う額や、どの日から何年を数えるのかを条文と公式の料金表で並べたページは、ほとんど見当たりません。

この記事は、民法の条文(e-Gov法令検索)、法務省の改正資料、日本郵便の料金ページ、信用情報機関JICCの公式の回答だけを材料に組み立てました。先に答えを書きます。

  • 時効は、期間が過ぎただけでは借金は消えません。「時効を援用します」と相手に伝えて初めて効き目が出ます(民法145条)。
  • 期間は、2020年4月1日以後の契約なら原則5年。それより前の契約は改正前の決まりで数え、消費者金融やカード会社のように商行為から生じた借金は5年、個人どうしの貸し借りは10年でした。
  • 判決や、異議を出さずに確定した支払督促がある借金は10年になります(民法169条)。
  • 一部でも払う、払うと約束する、といった「承認」があると、その日から数え直しです(民法152条)。
  • 内容証明に配達証明を付けて窓口から1枚で出すと、郵便局に払う額は1,420円。電子の「e内容証明」なら1枚1,645円で、文字数が多いときはこちらが安くなります。

時効援用とは:期間が過ぎても「伝える」までは借金が残る

民法145条は、時効について次のように定めています。

時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

「援用」は、時効の利益を使います、と相手に意思を示すことです。期間が過ぎた時点で自動的に借金がなくなるわけではなく、借りた本人(保証人も含みます)が「時効で消えたものとして扱ってください」と伝えて、はじめて相手は請求の根拠を失います。逆に言えば、何も伝えないまま放っておくと、期間が過ぎていても請求は続きますし、裁判を起こされたときに法廷で時効を言わなければ、裁判所は時効を前提に判断してくれません。

145条は伝える方法を決めていません。電話で言っても、普通の手紙でも、法律上は意思表示です。ただ、あとで「そんな連絡は受けていない」と言われたときに、いつ、どんな文面を、誰に送ったかを示せないと困ります。そのため実務では、送った文面と日付を郵便局が証明する内容証明郵便に、相手に届いた日を証明する配達証明を付けて出すのが一般的なやり方として広く紹介されています。この記事でもその方法で費用を計算します。

出典:民法(明治29年法律第89号)第145条 e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(2026年11月8日確認)

何年で時効になるか:2020年4月1日の前と後で決まりが違う

民法は2017年に債権の部分が大きく改正され、法務省によると2020年(令和2年)4月1日から施行されました。時効の期間はこの改正で変わったので、自分の借金がどちらの決まりで数えられるのかを、最初に見分けておく必要があります。

改正後(2020年4月1日以後に生じた借金)

民法166条1項は、債権が時効で消える場合を二つ挙げています。1号は、請求できると債権者が知った時点から5年間、請求しなかった場合。2号は、請求できるようになった時点から10年間、請求しなかった場合です。どちらか早く来たほうで時効が完成します。

貸したお金の返済を求める権利は、貸主が「いつから請求できるか」を契約で決めているので、請求できるようになった時点と、それを知った時点は基本的に同じです。法務省の改正資料も、売買代金などの契約上の債権は二つの時点が基本的に同一になる例として挙げています。そのため、消費者金融やカードの借入れでは、実際には「5年」で考えることになります。

改正前(2020年3月31日以前に生じた借金)

改正法の附則10条4項は、施行日より前に債権が生じた場合の時効期間は「なお従前の例による」、つまり改正前の決まりのままとしています。さらに同条1項のかっこ書きは、施行日以後に生じた債権でも、その原因である法律行為(契約)が施行日前にされたときは「施行日前に債権が生じた場合」に含めると定めています。契約の日付が2020年3月31日以前なら、改正前の決まりで数える可能性がある、ということです。

改正前の期間について、法務省の資料は次のように整理しています。

区分 改正前の期間 改正後の期間
原則(個人どうしの貸し借りなど) 権利を行使できる時から10年 知った時から5年、または行使できる時から10年のうち早いほう
商事(商行為によって生じた債権) 権利を行使できる時から5年
判決などで確定した権利 10年(旧民法174条の2) 10年(民法169条)

消費者金融やクレジットカード会社は会社ですから、そこから借りたお金は改正前でも「商行為によって生じた債権」として5年で数えるのが基本になります。一方、親族や知人、個人の貸主から借りたお金は、改正前の契約なら10年です。法務省の資料は、改正で「商事時効(5年)も廃止」し、5年と10年の二本立てに統一したと説明しています。

もう一つ、附則10条2項は、施行日前に起きた「時効の中断」(改正前の呼び方)の効き目も、改正前の決まりで判断するとしています。2020年より前に裁判や支払いがあった借金は、その出来事をどう扱うかも改正前の条文で読むことになります。

出典:民法第166条・第169条、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則第10条 e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 /法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html /法務省「重要な実質改正事項」https://www.moj.go.jp/content/001259610.pdf /法務省「新旧対照条文」https://www.moj.go.jp/content/001242222.pdf(いずれも2026年11月8日確認)

数え始める日:「最後に払った日」と「一括で請求できるようになった日」

期間の長さがわかっても、どの日から数えるかを間違えると、まだ期間が終わっていないのに援用の通知を送ってしまいます。早すぎた通知は効き目がないうえ、「借金があることは知っています」と書いた部分が残れば、かえって不利な材料になりかねません。

条文が決めている数え方

民法140条は、年で期間を決めたときは「期間の初日は、算入しない」としています。ある日から5年を数えるなら、その翌日が1日目です。そして143条2項により、期間は最後の年の「起算日に応当する日の前日」に満了します。たとえば4月28日が1日目なら、5年後の4月27日の終わりで期間が満ちます。

借金では「いつから請求できたか」が出発点

166条が数え始めを「権利を行使することができる時」としているので、借金の場合は、貸主がいつから返済を求められたかが起点になります。分割で返す約束なら、各回の支払日が過ぎるたびに、その回の分を請求できるようになります。

ここで関わってくるのが「期限の利益」です。分割払いの約束は、借りた人に「残りは期日まで払わなくてよい」という利益(期限の利益)を与えています。契約書に、支払いが遅れたらこの利益を失って残りを一括で払う、という条項(期限の利益喪失条項)がある場合、その条項が働いた時点から、貸主は残りの全額を請求できるようになります。全額についての時効も、その時から進むと考えるのが条文の素直な読み方です。条項があるか、遅れて何日目に、通知が要るのか要らないのかは、契約によって違うので、自分の契約書か、業者の会員ページで確かめてください。

「最後に払った日」がよく使われる理由

民法152条は、借金を認める行為(承認)があると、その時から時効が新しく進み直すと定めています。支払いは承認にあたるので、最後に1回でも払った日より前の期間は、すべて帳消しになります。だから実務では「最後に払った日」が数え始めの目安として語られます。ただ、厳密には「最後に払った日の翌日から5年」と「払わなかった支払日の翌日から5年」では、1か月ほどずれることがあります。迷ったら遅いほうの日で数えてください。期間を1か月長めに見積もって困ることはありませんが、短く見積もると取り返しがつきません。

設定(いずれも裁判・支払いの約束などは無かったとする) 数え始め(1日目) 期間が満ちる日 援用を出せる日
2021年の契約・最後の返済2021年3月27日・次の4月27日に払わず、その翌日から一括請求できる条項 2021年4月28日 2026年4月27日 2026年4月28日以降
2018年の消費者金融の契約(改正前・商事5年)・同じ日付 2021年4月28日 2026年4月27日 2026年4月28日以降
2018年に個人から借りた(改正前・10年)・返済日を2021年4月27日と決めていた 2021年4月28日 2031年4月27日 2031年4月28日以降

手元に記録がなく、最後に払った日も、いつ一括請求の状態になったかもわからない人は、信用情報機関の開示で「異動」の発生日を見る方法があります。CICでもJICCでも、本人が自分の記録を取り寄せられます。ただし開示に出るのは登録会社が報告した日付なので、それが時効の起点そのものとは限りません。目安として使い、最終的には業者の取引履歴と照らし合わせるのが確実です。

出典:民法第140条・第143条・第152条・第166条 e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(2026年11月8日確認)

時効が止まる・やり直しになる事由の一覧(民法147条〜152条)

改正後の民法は、時効が進まなくなる場面を二つに分けています。一つは完成猶予で、その間は期間が満ちない(終わりが先に延びる)という意味です。もう一つは更新で、その時点から期間をゼロに戻して数え直す、という意味です。改正前は「中断」「停止」と呼んでいたものを言い換えて整理し直しています。

出来事 条文 完成猶予(期間が満ちない) 更新(ゼロから数え直し)
裁判を起こされた(訴訟) 147条1項1号 裁判が続く間。判決で確定しないまま終わったら、そこから6か月 判決などで権利が確定したら、終わった時から新たに進む(期間は169条で10年)
支払督促を申し立てられた 147条1項2号 同上 確定判決と同じ効力が生じたら、そこから新たに進む
裁判所での和解・民事調停 147条1項3号 同上 和解・調停が成立したら、そこから新たに進む
債権者が破産・再生手続に参加 147条1項4号 同上 同上
強制執行(給料や口座の差押え)・担保権の実行・財産開示手続など 148条1項 手続が終わるまで。取下げなどで終わったら、そこから6か月 手続が終わった時から新たに進む(取下げ・取消しで終わった場合を除く)
仮差押え・仮処分 149条 終わった時から6か月 なし
催告(裁判外の請求。督促状や内容証明での請求) 150条 催告の時から6か月。猶予中の再度の催告は効かない なし
話し合いをするという合意を書面でした 151条 原則として合意から1年(延長は合計5年まで) なし
承認(一部の支払い・支払いの約束・猶予のお願いなど) 152条 ― 承認した時から新たに進む

表の中で、借りた人が気づかないうちに起きやすいのは二つです。一つは裁判所からの書類で、住所が変わっていて届いていない、あるいは届いても開けずにいる間に、手続が進んでいることがあります。もう一つが「承認」で、これは借りた人自身の行動で起きます。

反対に、督促状が何通届いても、それだけでは150条の「催告」にとどまり、6か月だけ終わりが延びる効き目しかありません。しかも猶予中にもう一度催告しても、さらに延びることはないと150条2項が定めています。電話や手紙で請求が続いていることと、時効が止まっていることは別の話です。

出典:民法第147条〜第152条 e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(2026年11月8日確認)

「少しだけでも払って」と言われたとき:承認でやり直しになる仕組み

長く止まっていた借金の請求で、よく出てくるのが「全額でなくていいので、まず数千円だけ」「今月いくらなら払えますか」という持ちかけです。金額が小さいので応じたくなりますが、時効の点から見ると、ここが一番大きな分かれ目になります。

152条1項は「時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める」と書いています。承認とは、相手に借金があると認める行動のことで、条文は形を限っていません。お金を一部でも払えば、その借金があることを前提にした行動なので承認にあたります。金額の大小は関係しません。払わなくても、「来月から払います」と約束する、分割の相談をする、返済を待ってほしいと頼む、残高を確認する書類に署名して返す、といった行動も、借金があると認めたものとして扱われる可能性があります。

しかも152条2項は、承認するのに、その権利を処分する能力や権限は要らないとしています。手続の重さに比べて、承認はとても軽い行動で成り立ってしまう、ということです。

期間が満ちる前に払った場合:その日から5年(または10年)を数え直しです。それまでに過ぎた年数はゼロになります。

期間が満ちた後に払った場合:この場合の扱いは条文には書かれていません。期間が過ぎていても、援用の通知を出す前に払ったり払う約束をしたりすれば、その後の援用が争いになりえます。援用を出すまでは、1円も払わず、払う約束もしない、という順番を守ってください。

電話口で答えに困ったら、「確認してから折り返します」とだけ伝えて切るのが無難です。借金の有無や金額について、その場で認める言葉を口にしないことが大切です。電話で話した内容でも、相手が記録を残していれば承認の証拠として出てくることがあります。

債務整理を考えている人にとっては、ここがもう一つの落とし穴になります。任意整理は「残っている借金を認めて、分割の約束をする」手続きなので、それ自体が承認です。時効が近い借金を整理の対象に入れると、そこで時効は数え直しになります。整理を頼む前に、各社の最後の返済日を並べて伝えておくことが大切です(任意整理の返済年数と時効援用の違いは、任意整理は何年で返す?の記事の中で一段落にまとめています)。

出典:民法第152条 e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(2026年11月8日確認)

判決・支払督促が出ている借金は10年になる

民法169条1項は、確定判決や、確定判決と同じ効力があるものによって確定した権利は、もともとの時効期間が10年より短くても、時効期間を10年にすると定めています。消費者金融の借金は本来5年ですが、一度判決が確定すると、そこから10年です。改正前の民法にも174条の2として同じ趣旨の規定がありました。

見落としやすいのが支払督促です。支払督促は、貸主が簡易裁判所の書記官に申し立てて、書類だけで支払いを命じてもらう手続きです。民事訴訟法は、債務者が支払督促の送達を受けた日から2週間以内に「督促異議」を申し立てないと、債権者の申立てで仮執行の宣言が付く(391条)、仮執行宣言付きの支払督促を受け取ってからさらに2週間が過ぎると異議を出せなくなる(393条)、そして異議がないまま確定すると「確定判決と同一の効力を有する」(396条)と定めています。

つまり、裁判所からの封筒を開けずに放っておくと、法廷に一度も行かないまま判決と同じ状態になり、時効は10年に延びます。何年か前に引っ越して、前の住所に書類が届いていた、という場合も起こりえます。開示や業者からの通知に「債務名義」「判決」「支払督促」といった言葉が出てきたら、5年ではなく、確定した日から10年で数え直してください。

反対に、いま裁判所から訴状や支払督促が届いたばかりで、期間が過ぎていると思うなら、2週間の期限内に異議を出し、裁判の中で時効を援用することになります。145条のとおり、裁判所は援用がなければ時効で判断できないので、黙っていれば請求どおりの判断になりかねません。

出典:民法第169条 e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 /民事訴訟法(平成8年法律第109号)第391条・第393条・第396条 https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109(いずれも2026年11月8日確認)

内容証明で自分で出すときの決まり(日本郵便)

日本郵便は内容証明を「いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって当社が証明する制度」と説明しています。証明されるのは文書が存在したことで、中身が正しいかどうかではありません。

窓口で出す場合に用意するもの

  • 相手に届く文書(内容文書)1通
  • 同じ文面の写し(謄本)2通。差出人用と郵便局の保管用です
  • 差出人と受取人の住所・氏名を書いた封筒
  • 郵便料金(内容証明の加算料金を含む)。日本郵便は念のため差出人の印鑑を持って行くよう勧めています

用紙の大きさや筆記具に決まりはなく、市販の内容証明用紙でなくても、コピーで作ってもかまわないとされています。ただし謄本には字数と行数の制限があり、縦書きは1行20字以内・1枚26行以内、横書きはそれに加えて1行13字以内・40行以内、または1行26字以内・20行以内の形でも作れます。記号は1個1字、括弧は上下(左右)で1字と数えます。謄本が2枚以上になるときは、つづり目に契印が要ります。

出せる郵便局も限られています。集配郵便局と支社が指定した郵便局だけで、特定の曜日にしか扱わない局もあるので、行く前に取扱局を確かめてください。内容証明は一般書留にする必要があり、簡易書留にはできません。

差し出した日から5年以内なら、差出郵便局に保管された謄本の閲覧を請求できます(閲覧料480円)。援用したあとで「受け取っていない」と言われた場合に備えて、受領証と自分用の謄本、配達証明のはがきは一緒に保管しておきましょう。

出典:日本郵便「内容証明」https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/index.html /「内容証明 ご利用の条件等」https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/use.html(いずれも2026年11月8日確認)

時効援用を自分でする費用:窓口とe内容証明を計算する

郵便局に払う額は、基本の郵便料金に、一般書留、内容証明、配達証明の加算を足したものです。日本郵便の公式ページに出ている料金は次のとおりです。

項目 料金 出典ページでの説明
定形郵便物(50g以内) 110円 手紙の基本料金
一般書留 +480円 損害要償額10万円まで。内容証明は一般書留が必須
内容証明(窓口) +480円 2枚目以降は1枚ごとに290円増
配達証明(差出時) +350円 差し出した後に請求すると480円

この表から、窓口で出した場合と、インターネットのe内容証明で出した場合を比べると、次のようになります(配達証明つき・相手1社・定形郵便物に収まる場合)。

出し方 計算 合計
窓口・謄本1枚(520字まで) 110+480+480+350 1,420円
窓口・謄本2枚(1,040字まで) 110+480+480+290+350 1,710円
窓口・謄本3枚(1,560字まで) 110+480+480+290+290+350 2,000円
e内容証明・1枚(約1,584字まで) 110+19+382+304+480+350 1,645円
e内容証明・2枚 110+19+6+382+360+304+480+350 2,011円

e内容証明の内訳は、郵便料金110円、電子郵便料金(1枚目19円・2枚目以降1枚6円)、内容証明料金(1枚目382円・2枚目以降1枚360円)、謄本を差出人に送り返す料金304円、一般書留480円です。日本郵便は、1枚目の通常送付の例として「110円+19円+382円+304円+480円=1,295円」と示しており、ここに配達証明350円を足しています。

比べると、520字に収まる短い通知なら窓口のほうが225円安いこと、521字以上になって窓口で2枚になるなら、1枚に約1,584字入るe内容証明のほうが安くなることがわかります。日本郵便も、文字数や通数が多い場合はe内容証明の方が安価になると案内しています。窓口の1,420円には、用紙のコピー代、封筒代、郵便局までの交通費は含みません。e内容証明は郵便局に行かずに24時間出せますが、日本郵便指定のWordのひな形を使う決まりがあり、差出人や受取人の自動挿入で、料金の対象になる枚数がWordのページ数より増えることがあるとされています。

借入先が3社あれば、窓口・1枚で1,420円×3=4,260円です。同じ相手に複数の契約があるなら、1通にまとめて書けば1通分で済みます。なお、e内容証明の「同文内容証明」は同じ文面を複数の宛先に送る仕組みなので、宛先ごとに契約内容が違う援用通知には使いにくいと考えてください。

出典:日本郵便「内容証明」https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/index.html /「書留」https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/kakitome/index.html /「配達証明」https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/haitatsu/index.html /「e内容証明(電子内容証明)」https://www.post.japanpost.jp/service/enaiyo/index.html /「手紙・はがきの料金」https://www.post.japanpost.jp/send/fee/kokunai/one_two.html(いずれも2026年11月8日確認)

時効援用通知書に入れる項目

決まった書式はありません。ただ、相手が「どの借金について、誰が、何を言ってきたのか」を取り違えないことと、借金を認める言葉が混ざらないことが大事です。文面を写して使える見本は載せず、入れる項目と、その理由だけを並べます。

項目 書く理由・気をつけること
差し出す日付 内容証明では郵便局が日付を証明しますが、文書の中にも書いておくと読み違いが起きません
宛先(いまの債権者)の正式名称と住所 債権が回収会社などに譲られていれば、届いた通知の差出人が今の相手です。元の借入先だけに送ると、援用が相手に届かないことがあります
差出人の住所・氏名(必要なら生年月日・旧住所・旧姓) 相手の記録と本人を突き合わせるためです。借りた当時と住所や姓が違う人は併記します
借金を特定する情報 契約番号・会員番号、契約日、借入れの種類(カードローン・ショッピングなど)。通知書に書かれた管理番号があれば、それも書きます
時効を援用するという意思 この文書の中心です。消滅時効を援用する、と曖昧さなく書きます
(必要に応じて)信用情報の記録を更新してほしいという依頼 次の章のとおり、記録の扱いは登録会社の報告で決まるためです

書かないほうがよいこと:残っている金額を認める書き方、「払えなくて申し訳ない」といったお詫び、分割や減額の相談、「もし時効でなければ払います」という条件つきの言葉。どれも借金があると認めたものとして読まれるおそれがあり、期間がまだ満ちていなかった場合に、152条の承認として使われかねません。

最後に払った日を書くかどうかは、迷うところです。正確に覚えているなら書いても構いませんが、うろ覚えの日付を書くと、相手の記録とずれたときに争いの種になります。書かなくても、援用の意思表示としては成り立ちます。

援用したあと、信用情報の記録はどうなるか(CIC・JICC)

借金が時効で消えても、信用情報機関にある延滞の記録がそのまま自動的に消えるとは限りません。記録を書き換えるのは機関ではなく、情報を登録している会社(貸主)だからです。今回、二つの機関の公式サイトで確かめられた範囲は次のとおりです。

JICC(日本信用情報機構)

JICCは「よくある質問」の、登録期間についての回答の中で、時効の援用を取り上げています。

「時効の援用」については、お客さまが債権者である登録会社に対し「時効の援用」をし、登録会社と認識に相違がない場合に、時効の起算日に遡って完済として登録されます(その時点で登録期間経過により登録情報は抹消されます)。

JICCの登録期間は、同じ回答で「契約継続中及び契約終了後5年以内」とされています。時効が完成するのは起算日から5年以上たった後なので、起算日にさかのぼって完済と登録されれば、その時点ですでに5年が過ぎており、記録は消える、という仕組みです。ただし条件は「登録会社と認識に相違がない場合」です。相手が時効の完成を認めない、たとえば途中で支払督促が確定していた、と主張している間は、この扱いにはなりません。

CIC(シー・アイ・シー)

CICの公式サイトでは、よくあるご質問(全カテゴリ)と保有期間の案内ページを確かめた範囲では、時効の援用をしたときの登録の扱いを説明した記載は見つかりませんでした。保有期間のページには、クレジットやローンの契約内容・支払状況について「契約期間中および契約終了後5年間」とあります。時効援用によって契約がいつ「終了」したと登録されるかは、登録会社の報告によるので、援用したあとに本人開示で確かめるのが確実です。

どちらの機関でも、援用から少し時間を置いて開示を取り、記録が残っていれば登録会社に連絡する、という順番になります。延滞の記録があるときに新しい借入れがどうなるかは、長期延滞中でも借りれるかの記事で、記録が消えない理由と合わせて書いています。

出典:JICC「JICCに登録されている信用情報は、どのくらいの期間登録されるのですか?」https://www.jicc.co.jp/faq/detail/a095i000000LtgCAAS /CIC「よくあるご質問」https://www.cic.co.jp/faq/ /CIC「信用情報の保有期間」https://www.cic.co.jp/guide/credit-information/possession/(いずれも2026年11月8日確認)

よく検索される質問

時効援用は自分でできますか?

できます。民法145条は援用の方法を決めていないので、本人が相手に意思を伝えれば成り立ちます。証拠を残すために、内容証明に配達証明を付けて出すのが確実で、窓口から1枚で出すと郵便局に払う額は1,420円です。ただ、判決や支払督促が出ていないか、承認にあたる行動がなかったかを自分で確かめきれないときは、出す前に専門家に記録を見てもらう価値があります。

時効援用は何年で使えますか?

2020年4月1日以後に生じた借金は原則5年、それより前の契約なら、消費者金融やカード会社のような商行為の借金は5年、個人どうしの貸し借りは10年です。判決や確定した支払督促があれば、そこから10年です。数え始めは、最後に払った日の翌日か、払わなかった支払日(一括請求できるようになった日)の翌日のうち、遅いほうで見ておくと安全です。

時効援用通知書は電話や普通郵便で伝えてもいいですか?

法律上は口頭でも意思表示になりますが、いつ何を伝えたかを後から示せません。電話では、相手の質問に答えるうちに借金を認める言葉が出てしまうおそれもあります。文面と日付を郵便局が証明する内容証明を使うのは、そのためです。

裁判所から通知が来た借金も時効援用できますか?

まだ判決や支払督促が確定していなければ、その手続きの中で時効を主張できます。支払督促は送達から2週間以内に異議を出さないと手続きが進むので、期限内に動いてください。すでに確定していれば、時効は確定した時から10年で数え直しです。

時効援用したら信用情報はすぐ消えますか?

JICCは、登録会社との認識に違いがなければ、時効の起算日にさかのぼって完済と登録し、その時点で登録期間が過ぎているので抹消される、と回答しています。CICは確かめた範囲で公式の説明が見当たらなかったので、援用から時間を置いて両方の機関で開示し、実際の記録を見てください。

時効援用で一番大事なのは、通知書の書き方よりも、その前の数え方です。最後に払った日と、一括で請求できるようになった日のうち遅いほうから数えて期間が満ちているか。途中に判決や支払督促、承認にあたる支払いや約束がなかったか。ここが確かめられていれば、通知そのものは1,420円の郵便1通で済みます。

反対に、ここがあいまいなまま「少しだけなら」と払ってしまうと、それまでの年数が消えます。請求の電話や通知が来ても、その場で認める言葉は出さず、手元の記録と開示で日付を固めてから動いてください。