個人再生のデメリットは?官報2回・車・保証人・家族を自己破産・任意整理と比較

個人再生を考え始めると、「官報に載る」「車を取られる」「保証人に迷惑がかかる」といった話が次々に出てきます。けれど、そのうちどれが個人再生に特有で、どれが自己破産や任意整理でも同じなのかは、並べてみないと見えてきません。

先に結論を書きます。個人再生だけに起きるデメリットは、大きく四つです。一つ目は、官報への掲載が条文上2回(再生手続開始の決定と、計画案を債権者に諮る決定)あり、認可の決定も送達の代わりに公告されうること。二つ目は、ローンが残っている車を手元に残すかどうかが、車検証の「所有者」欄と最高裁の判断で決まってしまうこと。三つ目は、借金を全部対象にしなければならないため、保証人のついた借入れだけを外せないこと(ここは任意整理と違います)。四つ目は、返す額に「最低弁済額」と「破産した場合の配当」という二つの下限があり、払えなくなれば189条で計画が取り消され、借金が元の額に戻りうることです。

この記事では、民事再生法・破産法・民法の条文と、裁判所・信用情報機関の公式の記載だけを使い、3つの手続きを1枚の表に並べてから、個人再生に特有の点を一つずつ確かめます。

3つの手続きを並べた比較表:個人再生だけに起きることはどれか

まず全体を一度に見ます。左から、裁判所を通さない任意整理、裁判所で借金を減らして分割で払う個人再生、裁判所で支払いの責任そのものを免れる自己破産です。太字にした行が、個人再生にだけ起きる、または個人再生で扱いがはっきり違う点です。

比べること 任意整理 個人再生 自己破産
手続きの性質 裁判所などを使わない私的な話合い 裁判所の手続き。減った額を原則3年で払う(229条2項2号) 裁判所の手続き。免責で支払い責任を免れる(破産法253条1項)
官報 公告の条文が当てはまらない(載らない) 開始決定(222条2項)と、決議に付する決定または意見聴取の決定(230条4項・240条2項)の2回が条文で必須。認可決定も送達の代わりに公告されうる(10条3項) 開始決定(32条、同時廃止なら216条3項)。免責許可の主文の送達も公告で代えられる(10条3項)
対象にする借金 話合いの相手を選べる 原則すべて。一覧表に全債権者を書く(221条3項1号) 原則すべて
ローンが残っている車 その会社を相手から外せば、約定どおり払い続けられる 所有権留保が別除権として使えるかは、開始決定の時点の登録で決まる(最高裁平成22年6月4日)。ローンだけ先に払うことは85条1項で禁止 担保を持つ側は、破産手続によらずに権利を使える(破産法65条1項)
保証人 保証人のいる借入れを外せば、保証人に請求は行かない 計画は保証人への権利に影響しない(177条2項) 免責は保証人への権利に影響しない(破産法253条2項)
家(住宅ローン) 住宅ローンを外して払い続ける 住宅資金特別条項で残す道がある。その効力は連帯保証人・連帯債務者にも及ぶ(203条1項) 家は手続きの中で処分の対象になる
返す額の下限 決まりはなく、合意しだい 最低弁済額(231条2項3号・4号)と、破産した場合の配当(174条2項4号)の大きいほう以上 支払いはなく、自由財産を除く財産が配当に回る(破産法34条)
債権者の反対 応じない相手とは和解できない 小規模個人再生は、反対が頭数で半数以上か、額で2分の1を超えると廃止(237条1項) 債権者の賛否で決まる仕組みはない
払えなくなったら 和解の約束しだい(法律の条文はない) 計画の取消しで、減った借金が元に戻りうる(189条7項) 免責の取消しは詐欺破産罪の有罪確定などに限られる(破産法254条)
資格の制限 なし なし 手続中は一部の資格が使えない

出典:民事再生法10条・85条・174条・177条・189条・203条・221条・222条・229条〜231条・237条・240条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225 )/破産法32条・34条・65条・216条・253条・254条(同 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075 )/法テラス「任意整理とは何ですか。」https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-niniseiri-001.html ・「任意整理のメリット・デメリットは何ですか。」https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin-niniseiri-002.html /最高裁判所第二小法廷 平成22年6月4日判決 https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-80283.pdf 。いずれも2026年11月8日確認。

表を縦に読むと、個人再生は「破産ほど失わないが、任意整理ほど選べない」位置にあることが分かります。財産を手放さずに済む代わりに、借金を全部まとめて裁判所に出し、法律が決めた額を払い切る約束をする。デメリットの多くは、この約束の重さから出てきます。自己破産の場面ごとのデメリットは自己破産のデメリットを資格・家族・記録の場面別にまとめた記事に、任意整理の期限つきのデメリットは任意整理のデメリットを時間の表で追った記事にあります。ここからは個人再生の行だけを掘り下げます。

官報:個人再生は「条文で必ず2回」、認可の決定でもう1回載りうる

民事再生法10条1項は、この法律による公告は「官報に掲載してする」と定めています。どの場面で公告が必要かは、それぞれの条文に書かれています。個人再生(小規模個人再生と給与所得者等再生)で、公告を「しなければならない」と書かれているのは次の二つです。

いつ 根拠の条文 載る中身(条文が挙げる事項)
1回目:再生手続開始の決定 222条2項(給与所得者等再生は244条で準用) 開始決定の主文、債権届出期間、一般異議申述期間
2回目(小規模個人再生):計画案を書面決議に付する決定 230条4項 決議に付する旨
2回目(給与所得者等再生):計画案について債権者の意見を聴く決定 240条2項 意見を聴く旨
3回目になりうる:再生計画認可の決定 174条4項の送達を、10条3項で公告に代えられる 認可の決定の主文など

出典:民事再生法10条・174条・222条・230条・240条・244条(e-Gov法令検索)。2026年11月8日確認。

認可の決定は、条文の上では債権者などへの「送達」が求められているだけです(174条4項)。ただし10条3項は、送達をしなければならない場合に「公告をもって、これに代えることができる」としています。債権者の数が多い手続きでは、この方法で認可の決定も官報に載ることがあります。何回載るかは「条文で必須の2回」と「代わりの公告による1回」に分けて考えると、ネットの説明で回数が食い違う理由が分かります。

自己破産と比べると、破産は開始決定の公告(破産法32条)が中心で、財産がほとんどなく開始と同時に手続きを終える「同時廃止」でも、開始と廃止の主文がまとめて公告されます(216条3項)。個人再生は、手続きの途中に債権者へ計画案を示す段階があり、そこで公告が入る点が違います。手続きが長いぶん、官報に名前が出る機会が多い、ということです。

任意整理は、法テラスが「裁判所などの公的機関を利用せず、当事者が私的に話合いをして」合意する手続きと説明しているとおり、民事再生法・破産法の公告の条文が当てはまりません。法テラスはメリットとして「官報に、住所や氏名等が記載されることがない」と書いています。

官報に載った情報が、どこで使われるか

全国銀行協会は、全国銀行個人信用情報センターで「官報に掲載された情報(氏名、住所、破産等の旨、日付等)」をセンターの会員と共同で利用していると公表しています。登録期間は「破産手続開始決定等を受けた日から7年を超えない期間」です。鹿児島地方裁判所の個人再生手続説明書も、開始決定がなされると「破産と同様に官報に掲載されます」と答えています。銀行のローンやカードの審査で、この記録が見られるということです。

出典:全国銀行協会「全国銀行個人信用情報センターにおける個人情報の取扱いについて」https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/privacy/ /鹿児島地方裁判所「個人再生手続説明書」https://www.courts.go.jp/kagoshima/vc-files/kagoshima/file/20304001.pdf 。2026年11月8日確認。

ローンが残っている車:車検証の「所有者」欄と、開始決定の日で決まる

任意整理なら、車のローンの会社を話合いの相手から外し、約束どおり払い続けることができます。個人再生ではそれができません。民事再生法85条1項は、開始決定の後は再生計画によらなければ再生債権を「弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為」をすることができないとしています。車のローンも再生債権の一つなので、車を残したいからといって、そのローンだけ毎月払い続けることは、ほかの債権者との平等(229条1項)を崩す行為になります。

では、車は必ず引き揚げられるのか。ここで効いてくるのが「所有権留保」と「別除権」です。

ローンで買った車は、払い終えるまで販売会社や信販会社が所有権を持っておく契約になっていることが多く、これを所有権留保といいます。民事再生法53条は、抵当権などの担保権を持つ人は、その財産について「別除権」を持ち、再生手続によらないで行使できると定めています。別除権が認められれば、ローン会社は手続きの外で車を引き揚げ、売って残りの借金に充てられます。足りない分だけが、再生債権として減額の対象に入ります(88条)。

この別除権が使えるかどうかについて、最高裁判所第二小法廷は平成22年6月4日の判決で、小規模個人再生をした人の自動車の代金を立て替えた信販会社の請求を退けました。判決は、所有権留保を担保として別除権の行使の対象に置いたうえで、その行使が認められるためには「原則として再生手続開始の時点で当該特定の担保権につき登記,登録等を具備している必要がある」とし(民事再生法45条参照)、その事件では「再生手続開始の時点で被上告人を所有者とする登録がされていない限り,販売会社を所有者とする登録がされていても」、信販会社は留保した所有権を別除権として行使できないと判断しています。

開始決定の時点の車検証の「所有者」 判決と条文から読めること 本人に起きること
自分 担保がついていない自分の財産 引き揚げはないが、車の価値は「破産した場合の配当」の計算に入り、返す額の下限を押し上げうる
ローンを組んだ信販会社・銀行など(貸した本人) 登録があるので、別除権として行使できる側に立つ 手続きの外で引き揚げられうる。売った額で足りない分は再生債権として減額される
販売会社だが、お金を立て替えたのは信販会社 平成22年判決の事案と同じ形。立替払いをした信販会社は、販売会社名義の登録では別除権を行使できないとされた 判決の事案では、信販会社の引渡しの請求は認められなかった

出典:最高裁判所第二小法廷 平成22年6月4日判決(自動車の代金を立替払した者の留保所有権と別除権)https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-80283.pdf /民事再生法45条・53条・85条・88条・229条(e-Gov法令検索)。2026年11月8日確認。

上の表は、判決が扱った契約の形(販売会社・購入者・信販会社の三者契約)を前提にしています。契約の書き方や、立て替えた会社が法律上当然に権利を引き継ぐ形かどうかで結論が変わる余地があるため、この記事では「三番目の形なら必ず車が残る」とは言いません。自分の車検証の所有者欄と、ローン契約書の所有権の条項を、申立てを頼む専門家にそのまま見せてください。

車が自分名義で、ローンもない場合にも、個人再生ならではの影響があります。後で見る「破産した場合の配当」を下回る計画は認可されないため、価値のある車を持っていると、その分だけ払う総額が上がることがあります。自己破産では、自由財産に当たらない価値のある車は破産財団に入り(破産法34条)、処分の対象になります。個人再生は車を手放さない代わりに、その価値の分をお金で払う形になる、という違いです。

保証人:個人再生では「外す」ことができず、減額も保証人には及ばない

家族への影響がいちばん直接に出るのは、家族が保証人になっている借入れです。ここは任意整理と個人再生で結論が分かれます。

任意整理は話合いの相手を選べるので、保証人のついた借入れを相手から外し、約束どおり払い続ければ、保証人に請求が向かう理由そのものが生まれません。個人再生は、債権者一覧表に再生債権者の氏名や債権の額を書くことが求められ(221条3項1号)、保証人のついた借入れも同じように手続きに入ります。そして、その会社への返済は開始決定のあと止まります(85条1項)。

次に、計画で借金が減っても、保証人の責任は減りません。民事再生法177条2項は、再生計画は「再生債権者が再生債務者の保証人その他再生債務者と共に債務を負担する者に対して有する権利」に影響を及ぼさないと定めています。自己破産の免責も、破産法253条2項で同じ扱いです。本人の借金が5分の1になっても、保証人は元の契約どおりの責任を負ったままです。

順番 起きること 根拠
1 本人の返済が止まり、契約の定めで期限の利益(分割で払ってよいという約束)を失う ローン契約の条項
2 債権者は、期限の利益の喪失を知ってから2か月以内に、個人の保証人へ通知しなければならない 民法458条の3第1項・3項
3 通知が遅れた場合、その間の遅延損害金は保証人に請求できない 民法458条の3第2項
4 保証人は、本人が払わない分を払う責任を負う。再生計画で減った分も含めて減らない 民法446条1項、民事再生法177条2項
5 保証人が払った分を本人に請求する権利(求償権)は、開始前の保証契約が原因なので再生債権の側に入る 民事再生法84条1項、民法459条

出典:民法446条・458条の3・459条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 )/民事再生法84条・85条・177条・221条(同)/破産法253条(同)。2026年11月8日確認。

5番目が示すとおり、保証人が肩代わりした分を本人に返してもらおうとしても、その請求は計画で減額された割合でしか払われません。家族が保証人になっている借入れがある人にとって、個人再生は「本人の借金は減るが、その減った分を家族がかぶる」形になりやすい手続きです。申し立てる前に、どの借入れに誰が保証人として入っているかを書き出し、その家族に事情を伝えておく必要があります。2か月以内の通知の条文があるので、黙っていても保証人には債権者から知らせが届きます。

なお、鹿児島地方裁判所の説明書も、計画が認可された場合の保証人への影響について、177条2項により保証人への権利には影響を及ぼさないのが原則と答えています。そのうえで、例外として住宅資金特別条項を挙げています。次の見出しで扱うのがその例外です。

家と家族:住宅資金特別条項は、連帯保証人・連帯債務者にも効く

家族への影響のもう一つの柱は家です。個人再生には、住宅ローンを減らさずに払い続けることで家を残す「住宅資金特別条項」があります。住宅ローンの返済が三本立てになる流れは個人再生中に借りられるかを段階ごとに確かめた記事で扱ったので、ここでは家族に関わる条文だけを見ます。

民事再生法203条1項は、住宅資金特別条項を定めた計画の認可が確定したときは、177条2項(保証人には影響しないという原則)を、住宅と敷地の抵当権、そして住宅ローンの債権者が「再生債務者の保証人その他再生債務者と共に債務を負担する者に対して有する権利」については適用しないと定めています。さらに、本人が連帯債務者の一人であるときは、特別条項による期限の猶予は「他の連帯債務者に対しても効力を有する」としています。

夫婦で連帯債務の住宅ローンを組んでいる場合や、親が連帯保証人に入っている場合、本人が特別条項で返済期間を延ばせば、その延長は家族の側にも同じように効くということです。住宅ローン以外の借金では保証人が置き去りになるのに対し、住宅ローンだけは家族と一緒に計画に乗る。この違いは、自己破産にも任意整理にもない、個人再生だけの仕組みです。

家族の立場 住宅ローン以外の借金 住宅資金特別条項を使った住宅ローン
連帯保証人(親など) 計画の影響を受けず、元の契約どおり責任を負う(177条2項) 特別条項の内容が保証人への権利にも及ぶ(203条1項前段)
連帯債務者(夫婦で組んだ場合など) 本人の計画とは別に、元の契約どおり 期限の猶予が他の連帯債務者にも効く(203条1項後段)

出典:民事再生法177条・196条・198条・199条・203条(e-Gov法令検索)/鹿児島地方裁判所「個人再生手続説明書」の保証人への影響の項。2026年11月8日確認。

使える条件も、家族の事情に左右されます。保証会社が住宅ローンを代わりに払った(代位弁済)場合は、その日から6か月を過ぎるまでに申し立てないと特別条項を定められません(198条2項)。返済期間を延ばす形では、延ばした後の最終の期日に本人が70歳を超えないことが条件です(199条2項2号)。住宅に住宅ローン以外の担保(たとえば別の借金の抵当権)がついていると、特別条項自体が使えません(198条1項ただし書)。住宅ローンを組むときの審査で見られる記録の期間は債務整理と住宅ローンの記事で数えています。

返す額の決まり:最低弁済額と「破産した場合の配当」の二つの下限

任意整理の返す額は話合いで決まり、自己破産には返す額がありません。個人再生だけが、法律の決めた下限を割る計画を認めません。下限は二つあり、大きいほうが効きます。

一つ目は最低弁済額です。小規模個人再生では、住宅ローンや担保で回収できる分を除いた借金(基準債権)の総額に応じて、231条2項3号・4号が下限を決めています。具体的な額で並べると、次のようになります。

住宅ローン等を除いた借金の総額(例) 当てはまる決まり 最低弁済額 3年36回で割ると
80万円 100万円を下回るので総額そのまま 80万円 約2万2千円
300万円 5分の1(60万円)と100万円の多いほう 100万円 約2万8千円
800万円 5分の1 160万円 約4万4千円
2,000万円 5分の1が300万円を超えるので300万円 300万円 約8万3千円
4,000万円 3,000万円超5,000万円以下は10分の1 400万円 約11万1千円

出典:民事再生法221条1項・229条2項・231条2項2号〜4号(e-Gov法令検索)。計算は記事作成者。2026年11月8日確認。

総額が5,000万円を超えると、小規模個人再生そのものが使えません(221条1項、231条2項2号)。また、返済は3か月に1回以上の分割で、最終の期日は原則として認可の確定から3年、特別の事情があっても5年までです(229条2項)。表の右の列は36回で割った目安で、実際の回数は計画によります。

二つ目は、清算価値と呼ばれる下限です。民事再生法174条2項4号は、計画が「再生債権者の一般の利益に反するとき」は認可しないとし、小規模個人再生も231条1項でこれを使います。鹿児島地方裁判所の説明書は、財産を合計して破産した場合の配当額のほうが大きければ「更に高い金額で設定しないと認可されません」と書いています。預金、保険の解約返戻金、ローンのない車などを持っている人は、最低弁済額よりこちらが効きます。

破産の「残せる財産」との違い

自己破産では、民事執行法131条3号の額(政令で66万円)に2分の3を掛けた金銭、つまり99万円までの現金などは破産財団に入らず、手元に残ります(破産法34条3項1号、民事執行法施行令1条)。個人再生では財産を手放さずに済みますが、その代わり、財産の価値の分を計画の中で払うことになります。持っている財産が多い人ほど、個人再生で減る幅は小さくなります。

出典:破産法34条(e-Gov法令検索)/民事執行法施行令1条 https://laws.e-gov.go.jp/law/355CO0000000230 /鹿児島地方裁判所「個人再生手続説明書」。2026年11月8日確認。

給与所得者等再生では、さらに3つ目の比べる相手があります。241条2項7号により、計画で払う総額は、手取り収入から政令で決まる最低限の生活費を引いた額の2年分以上でなければなりません。債権者の決議が要らない代わりに、収入が多い人ほど払う額が上がる仕組みです。

計画が崩れたとき:189条の取消しと、小規模個人再生の「反対」

個人再生に特有のデメリットのうち、後から効いてくるのがこの見出しの二つです。

一つは、認可の前に計画が止まる場合です。小規模個人再生では、計画案は債権者の書面による決議にかけられ、反対と答えた債権者が頭数で半数以上になるか、その額が総額の2分の1を超えると、裁判所は職権で手続きを廃止しなければなりません(237条1項)。大口の債権者が一社でもあれば、その会社の態度で手続きが終わる可能性があるということです。財産目録に書くべき財産を書かなかった場合も、廃止の理由になります(237条2項)。給与所得者等再生には決議がありませんが、上で見た2年分の可処分所得の条件を満たす計画が作れなければ、やはり廃止されます(243条)。

もう一つは、認可が確定した後に払えなくなった場合です。民事再生法189条1項は、再生債務者が「再生計画の履行を怠ったこと」(2号)などがあるとき、再生債権者の申立てで裁判所が計画を取り消すことができると定めています。履行の遅れを理由に申し立てられるのは、計画で認められた権利のうち、まだ払われていない分の10分の1以上を持ち、期日の来た分を受け取っていない債権者に限られます(189条3項)。

取消しが確定すると、189条7項により「再生計画によって変更された再生債権は、原状に復する」ことになります。たとえば総額800万円を160万円に減らす計画で、80万円まで払ったところで取り消されると、払った80万円は返ってこないまま(同項ただし書)、債権者は元の800万円を前提に残りを請求できる状態に戻ります。計画の総額が破産した場合の配当を下回ることが後から分かった場合も、取消しの理由になります(236条)。

手続き 払えなくなったときの法律上の扱い
任意整理 法律の条文はなく、和解の中の約束(一括で払う、など)しだいで決まる
個人再生 計画の取消し(189条)で減額前に戻りうる。ただし、やむを得ない事由なら期間の延長(234条)、責めに帰さない事由で4分の3以上払っていれば免責(235条)の申立ての道がある
自己破産 免責の後は払う計画自体がない。免責の取消しは詐欺破産罪などの有罪確定や不正の方法による免責に限られる(破産法254条)

出典:民事再生法189条・234条・235条・236条・237条・243条(e-Gov法令検索)/破産法254条(同)。2026年11月8日確認。

認可の確定とともに小規模個人再生は終わり(233条)、その後は裁判所の監督を離れて自分で払っていきます。監督がない中で3年から5年、一度も止めずに払い続けることが前提になっている点が、個人再生の一番重いデメリットと言えます。返済中に新しく借りた場合の扱いは、冒頭で触れた段階別の記事で確かめてください。

信用情報と官報情報:3つの手続きで「数え始め」がどう変わるか

最後に、カードやローンの審査で見られる記録です。期間そのものは手続きによって変わりませんが、どの日から数えるかが手続きによって変わります。個人再生は計画の返済が3年から5年続くため、「払い終えた日」から数える記録が、ほかの手続きより遅れて消えるのが特徴です。

機関と情報 公式の登録期間 個人再生での数え始め 自己破産・任意整理との違い
全国銀行個人信用情報センター 官報情報 破産手続開始決定等を受けた日から7年を超えない期間 官報に載った開始決定の日 任意整理は官報に載らないので、この記録自体がない
全国銀行個人信用情報センター 取引情報 契約期間中および契約終了日(完済していない場合は完済日)から5年を超えない期間 計画どおり払い終えた日など、各社が登録する契約の終わり 自己破産は免責で払わずに終わる
CIC クレジット情報 契約期間中および契約終了後5年間 同上 同上
JICC(契約日2019年10月1日以降)取引事実に関する情報(債務整理など) 契約継続中及び契約終了後5年以内 契約の終わりから5年 考え方はCICと同じ
JICC(契約日2019年9月30日以前)取引事実に関する情報 当該事実の発生日から5年を超えない期間 債務整理の事実が登録された日から5年 返済状況の記録は「完済日から5年を超えない期間」で別に数える

出典:全国銀行協会「全国銀行個人信用情報センターにおける個人情報の取扱いについて」https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/privacy/ /CIC「CICが保有する信用情報」https://www.cic.co.jp/confidence/posession.html /JICC「信用情報の内容と登録期間」https://www.jicc.co.jp/aboutus/credit-info/registration 。いずれも2026年11月8日確認。

JICCの行は、契約日で二つに分かれます。2019年10月1日以降に結んだ契約では、債務整理の記録も契約が終わってから5年残ります。2019年9月30日以前の契約では、債務整理の事実はその発生日から5年で、返済状況は完済日から5年です。古い契約だけ、債務整理の記録が先に消えて返済状況の記録が後に残る、という順番の入れ替わりが起こりえます。

数え方の例を挙げます。仮に2027年3月に開始決定、同年9月に認可が確定し、3年で払い終えたとすると、官報情報は2034年3月ごろまで、払い終えた日から5年の記録は2035年9月ごろまでです。5年の計画なら後者は2037年9月ごろになります。各社が「契約の終わり」をどの日で登録するかは会社ごとに違うので、実際の日付は各機関の本人開示で確かめるのが確実です。

よく検索される質問

個人再生をすると家族に影響はありますか

信用情報は契約ごとに、その契約をした人について登録されるものとして各機関が説明しており、家族が自分で契約していない借入れの記録が家族の側に付くことは、その説明からは読み取れません。法律の上で家族に影響が出るのは、二つの場面です。一つは家族が保証人になっている借入れで、計画で減った分も含めて保証人の責任は残ります(民事再生法177条2項)。もう一つは住宅ローンで、住宅資金特別条項を使えば、その内容が連帯保証人・連帯債務者にも及びます(203条1項)。

個人再生をすると、ローンの残った車は必ず引き揚げられますか

必ずではありません。ローン会社が別除権として引き揚げられるかは、開始決定の時点で、その会社が車の所有者として登録されているかで決まるというのが、最高裁平成22年6月4日判決の考え方です。ただし契約の形で結論が変わる余地があるので、車検証と契約書で確かめてください。逆に、ローンだけ払い続けて車を守ることは85条1項に反します。

個人再生の官報は何回載りますか

条文で公告が必須なのは、開始決定(222条2項)と、計画案を書面決議に付する決定(小規模個人再生、230条4項)または債権者の意見を聴く決定(給与所得者等再生、240条2項)の2回です。認可の決定は、送達を公告で代える10条3項の方法がとられると、もう1回載ります。

知恵袋で「個人再生しても困ることはなかった」という書き込みを見ました

書き込みの人に保証人がいたか、ローンの残った車や家があったか、財産がどれくらいあったかが分からないので、この記事では判断しません。比較表の太字の行に一つも当てはまらない人なら、困る場面が少ないのは条文からも説明がつきます。逆に当てはまる行があれば、その行の条文が自分にも適用されます。

個人再生のデメリットを自分に当てはめるときは、比較表の太字の行を上から順に、自分の書類で確かめていくのが早道です。官報は開始と計画の段階で必ず載る。車は、車検証の所有者欄に誰の名前があるか。保証人は、どの借入れに誰が入っているか。家は、住宅ローンに家族が連帯して入っているか。そして、最低弁済額と財産の価値のどちらが大きいか。

この五つが分かれば、個人再生で何を守れて、何を引き受けることになるのかが、自分の数字で見えてきます。三つの手続きのどれを選ぶかは、その数字を持って決めることです。