自己破産を考えているけれど、仕事を続けられるのか、入っている生命保険は取り上げられるのか、妻や子どもに迷惑がかかるのか。調べるほど「デメリット」の一覧が長くなり、どれがいつまで続くのかが分からなくなっている。
先に結論を書きます。自己破産のデメリットは、起きる場面ごとに終わる時期がまったく違います。資格の制限は「復権」で解けます。免責許可の決定が確定すれば、それだけで復権します(破産法第255条第1項第1号)。生命保険は、解約したときに戻るお金(解約返戻金)が破産の財産に入るのが原則で、残せるかどうかは金額と裁判所の判断で決まります(同法第34条)。家族の信用情報に、あなたの破産が書き込まれることはありません。ただし、家族があなたの借入れの保証人になっている場合は、保証人の支払義務は残ります(同法第253条第2項)。そして、子どもが日本学生支援機構の奨学金を「人的保証」で借りるとき、債務整理中の人は連帯保証人・保証人になれません。
この記事は、破産法・警備業法・保険業法・宅地建物取引業法・民事執行法・民法の条文(e-Gov法令検索)、千葉・松江・水戸の各地方裁判所が公開している説明書、CIC・JICC・全国銀行協会の公式ページ、日本学生支援機構の公式ページ、官報発行サイトを2026年11月8日に開き、そこに書かれていることだけで組み立てています。
自己破産のデメリットは「資格・財産・家族・記録」の4つの場面で起きる
検索で出てくるデメリットの一覧は、性質の違うものが一緒に並んでいます。仕事の資格のように手続の途中で終わるもの、生命保険のように手続の最初で決まってしまうもの、信用情報のように手続が終わったあと何年も続くもの、そしてそもそも起きないもの。まず、場面ごとに「何が」「何によって」「いつまで」を一枚に並べます。
| 場面 | 何が起きるか | 根拠 | いつまで |
|---|---|---|---|
| 資格・仕事 | 警備員、生命保険募集人、宅地建物取引士などに就けない・登録できない | 各資格の法律の欠格事由(「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」) | 復権まで。免責許可の決定が確定すれば復権(破産法第255条) |
| 官報 | 破産手続開始の決定などが官報に載る | 破産法第10条・第32条・第216条 | 紙面は残り続ける。官報発行サイトで無料で読めるのは直近90日分 |
| 財産(生命保険など) | 解約返戻金が破産の財産に入るのが原則 | 破産法第34条 | 手続の中で決まる。自由財産の範囲を広げる申立ての期限は、開始決定の確定から1か月 |
| 転居・郵便物 | 居住地を離れるには裁判所の許可。管財事件では郵便物が破産管財人に届くことがある | 破産法第37条・第81条 | 破産手続が終わるまで |
| 家族 | 家族の信用情報には書かれない。保証人になっている家族の支払義務は残る | CICの説明、破産法第253条第2項 | 保証人の義務は、その借入れが片付くまで |
| 子ども(奨学金) | 債務整理中は、人的保証の連帯保証人・保証人になれない | 日本学生支援機構の選任条件 | 「債務整理中」でなくなるまで |
| 信用情報・官報情報 | 新しい借入れやカードの審査で記録を見られる | CIC・JICC・全国銀行協会の公式ページ | 機関ごとに5年または7年(後の章で) |
| 2回目の免責 | 前の免責から7年以内の申立ては、免責不許可事由にあたる | 破産法第252条第1項第10号 | 前回の免責許可の決定の確定から7年 |
任意整理の場合のデメリットを、依頼した日からの時間の順に並べた記事は任意整理のデメリットはいつまで?にあります。自己破産は裁判所の手続なので、任意整理にはない「資格」「財産」の場面が加わります。以下、場面ごとに条文と公式の記載を見ていきます。
出典:破産法(https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075)。2026年11月8日確認。
資格の場面:警備員・生命保険募集人・宅建士は「復権を得ない者」が外れる
「自己破産すると仕事を失う」と言われるのは、いくつかの資格の法律が、資格を持てない人(欠格事由)として「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」を挙げているからです。破産法そのものが「この仕事に就くな」と定めているのではありません。破産法第255条第2項は、復権の効果は「人の資格に関する法令の定めるところによる」としていて、制限の中身はそれぞれの資格の法律が決めています。
確かめた3つの法律の書き方を並べます。
| 仕事・資格 | 条文 | 条文の書き方 |
|---|---|---|
| 警備員 | 警備業法第14条第1項、第3条第1号 | 第3条第1号から第7号までのいずれかに該当する者は「警備員となつてはならない」。第1号が「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」 |
| 生命保険募集人 | 保険業法第276条・第279条第1項第1号・第307条第1項第1号 | 生命保険募集人は登録が必要。「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」は登録を拒否され、登録後に該当すると登録の取消しまたは業務停止の対象 |
| 宅地建物取引士 | 宅地建物取引業法第18条第1項第2号・第21条第2号・第22条 | 「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」は登録を受けられない。登録後に該当したら本人が30日以内に届け出て、登録は消除される |
裁判所の説明も同じことを書いています。千葉地方裁判所の説明書は、破産手続開始決定を受けると宅地建物取引主任者(現在の宅地建物取引士)、旅行業務取扱主任者、警備員、保険外交員などに「なることができなくなります」とし、「免責決定が確定すれば,この制限は解除されます」と続けています。松江地方裁判所の説明書も、生命保険外務員・警備員などの資格制限を挙げ、「免責許可決定が確定すればこの制限はなくなります」と書いています。
多くの人にとって、申し込む必要はありません。破産法第255条第1項は、次のどれかにあたると「復権する」と定めています。第1号が免責許可の決定が確定したとき、第2号が債権者の同意による破産手続廃止の決定が確定したとき、第3号が再生計画認可の決定が確定したとき、第4号が開始決定後に詐欺破産罪で有罪の確定判決を受けずに10年がたったときです。個人の自己破産は免責とセットで進むので、ほとんどの場合は第1号で、免責の確定と同時に資格の制限が終わります。反対に、免責が許可されなかった場合は第1号が使えません。資格の仕事を続けたい人にとって、免責不許可事由(後の章)を抱えていないかは、借金が残るかどうかと同じくらい重い問題です。
会社の役員については、資格の欠格とは別の仕組みが働きます。民法第653条第2号は、委任は「委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと」で終了すると定めています。会社と取締役の関係は委任なので、開始決定の時点でいったん終わります。会社法には破産を取締役の欠格とする定めはないため、改めて選ばれることはできますが、その間は役員の席が空くことになります。
松江地方裁判所の説明書は、破産手続開始決定を受けた事実が「戸籍に記載されることはありません」、開始決定を受けても「選挙権・被選挙権を失いません」と明記しています。同じ説明書は、免責許可決定がされないことが確定した場合は本籍地に通知すると書いています。つまり、本籍地の役所に知らせが行くのは、免責が得られなかった場合です。
出典:破産法第255条、警備業法第3条・第14条(https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000117)、保険業法第276条・第279条・第307条(https://laws.e-gov.go.jp/law/407AC0000000105)、宅地建物取引業法第18条・第21条・第22条(https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176)、民法第653条(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)、会社法第331条第1項(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086)、千葉地方裁判所民事第4部「破産・免責手続について-よくあるご質問・お問い合わせ-」Q16(https://www.courts.go.jp/chiba/vc-files/chiba/file/03mousitateninnitaisurusetumeisho.pdf)、松江地方裁判所「破産・免責手続のあらまし」(https://www.courts.go.jp/matsue/vc-files/matsue/2023/20240115_hasanzikensyosiki/1_hasantetudukinoaramashi_moushitateshokinyuuyouryou.pdf)。いずれも2026年11月8日確認。
官報の場面:何が載り、誰が、どこで読めるのか
破産法第10条第1項は「この法律の規定による公告は、官報に掲載してする」と定めています。どの場面で公告されるかは、手続の種類で変わります。
- 破産管財人が選ばれる場合(管財事件):第32条第1項により、裁判所は開始決定をしたら「直ちに」、開始決定の主文、破産管財人の氏名、債権を届け出る期間などを公告します。
- 財産が少なく、開始と同時に手続を終える場合(同時廃止):第216条第3項により、開始決定の主文と、破産手続廃止の決定の主文・理由の要旨を公告します。
- 免責許可の決定:第252条第3項は、決定の主文を書いた書面を破産債権者に「送達」すると定めています。同時に、第10条第3項本文は送達を公告で代えられるとしていて、第252条第3項がこの代替を外しているのは破産者・破産管財人への裁判書の送達だけです。債権者への知らせは、官報への公告で代えることが条文上できる形になっています。
千葉地方裁判所の説明書は、破産の手続は非公開で、破産債権者になっていない限り「裁判所から勤務先やご家族あてに通知することはありません」と書いたうえで、「破産した人の氏名や住所は,官報に掲載されます」と続けています。
官報は2025年4月1日から「官報発行サイト」で発行されています。トップページには「直近90日間は全て無料で閲覧できます」とあり、それより前の号は「過去の官報」のページで提供されています。誰でも読めるのは事実ですが、日々の号に載る大量の公告の中から特定の名前を探す人は、仕事で官報を読む人にほぼ限られます。
その仕事で読む人の代表が銀行です。全国銀行個人信用情報センターの公式ページは、「官報に掲載された情報(氏名、住所、破産等の旨、日付等)」をセンターの会員(銀行など)と全国銀行協会で共同利用していると書いています。官報に載ることのいちばん実害のある影響は、近所に知られることより、銀行の審査で7年間参照される記録になることです。
出典:破産法第10条・第32条・第216条・第252条、千葉地方裁判所の説明書Q18(URLは前出)、官報発行サイト(https://www.kanpo.go.jp/)、全国銀行協会「全国銀行個人信用情報センターにおける個人情報の取扱いについて」(https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/privacy/)。いずれも2026年11月8日確認。
財産の場面:生命保険の解約返戻金はどう扱われるか
「自己破産すると生命保険を解約させられる」という話は、半分正しく、半分は条件つきです。条文の順に見ます。
破産法第34条第1項は、破産者が破産手続開始の時に持っている「一切の財産」を破産財団(債権者に分けるための財産のかたまり)とします。生命保険そのものは物ではありませんが、解約すれば保険会社から戻るお金を受け取る権利があるので、その権利が財産として数えられます。千葉地方裁判所の説明書も、「財産」に入るものとして不動産・自動車と並べて「生命保険の解約返戻金」を挙げています。
一方で、第34条第3項は、破産財団に入らない財産(自由財産)を定めています。
- 第1号:民事執行法第131条第3号の額に「二分の三」を掛けた額の金銭。民事執行法施行令第1条はその額を66万円と定めているので、66万円×3/2=99万円までの現金です。
- 第2号:法律で差し押さえが禁止されている財産。
第1号は「金銭」、つまり現金の話です。解約返戻金は保険会社に対する権利なので、そのままでは第1号にあたりません。そこで使われるのが第34条第4項の「自由財産の範囲の拡張」です。裁判所は、開始決定の時から、その決定が確定した日から1か月がたつ日までの間に、破産者の申立てまたは職権で、生活の状況や財産の種類・額、収入の見込みなどを考えて、破産財団に入らない財産の範囲を広げることができます。拡張するときは破産管財人の意見を聞きます(第5項)。
どの程度まで拡張を認めるかの基準は、条文には書かれていません。確かめた範囲で、裁判所が公開している資料は次のように書いています。
- 水戸地方裁判所(平成31年4月1日実施の運用):保険の解約返戻金を含む個別の財産で項目ごとの合計が20万円以上のものがある場合は、原則として管財事件(破産管財人が選ばれる手続)にするとしています。解約返戻金は「保険会社から契約者貸付けを受けている場合には貸付残高を控除する」と書かれています。これは手続の振り分けの基準で、保険を残せるかどうかの基準そのものではありませんが、20万円未満なら、保険だけを理由に管財事件になることは原則としてない、ということは読み取れます。
- 松江地方裁判所:管財事件では「破産者が加入している保険は全て解約されます」と書いています。あわせて、申立書の財産目録では、契約者になっている保険の契約内容と解約返戻金の額を書き、申立て前2年以内に解約した保険は使い道も報告するよう求めています。
この2つを合わせると、生命保険について確かめるべき数字は「保険料をいくら払ってきたか」ではなく、今解約したらいくら戻るか(契約者貸付けがあれば差し引いた額)です。掛け捨ての医療保険や定期保険のように解約返戻金がほとんどない契約は、この計算で0円に近くなります。保険会社に解約返戻金の額を証明する書類を出してもらえば、自分がどちらの側にいるかが分かります。
申立ての前に保険を解約したり、契約者を家族に変えたりする前に。松江地方裁判所は申立て前2年以内の解約と使い道の報告を求めており、破産法第252条第1項第1号は、債権者を害する目的での財産の隠匿や「債権者に不利益な処分」を免責不許可事由に挙げています。同じ松江地方裁判所の説明書は、名義が他人になっていても実質的に破産者の財産であれば換価・配当の対象になることがあるとも書いています。保険を守るつもりの手続が、免責そのものを危うくすることがあります。
出典:破産法第34条・第252条、民事執行法第131条(https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004)、民事執行法施行令第1条(https://laws.e-gov.go.jp/law/355CO0000000230)、千葉地方裁判所の説明書Q6(URLは前出)、水戸地方裁判所「同廃・管財振り分けの運用について」(https://www.courts.go.jp/mito/vc-files/mito/file/31.4.1hasankijyun.pdf)、松江地方裁判所「破産・免責手続のあらまし」(URLは前出)。いずれも2026年11月8日確認。
手続の間だけ続く制限:引っ越し・旅行と郵便物
資格や保険と違い、手続が終われば自動的に終わる制限が2つあります。
1つは住む場所です。破産法第37条第1項は、破産者は申立てにより「裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない」と定めています。松江地方裁判所の説明書は、これを「破産手続が終了するまで裁判所の許可を受けずに転居することができず」と説明しています。長い旅行や引っ越しの予定がある人は、手続の期間と重なるかを先に確かめる必要があります。
もう1つは郵便物です。第81条第1項により、裁判所は破産管財人の仕事に必要なときは、破産者あての郵便物を破産管財人に届けるよう郵便事業者に頼むことができます。第3項は、破産手続が終わったら裁判所はこの依頼を「取り消さなければならない」としています。松江地方裁判所の説明書は、破産者あての郵便物を破産管財人が「開封して中身を確認することがあります」と書いています。家族と暮らしている人にとっては、家族あての郵便が混ざることも含めて、手続中の生活の変化として知っておくべき点です。
千葉地方裁判所の説明書によれば、手続全体は「概ね最短で3,4か月程度」です。この2つの制限はその期間の話で、免責が確定したあとまでは続きません。
出典:破産法第37条・第81条、松江地方裁判所の説明書、千葉地方裁判所の説明書Q3(URLはいずれも前出)。2026年11月8日確認。
家族の場面:家族の信用情報には書かれない。ただし「保証人」は別
「自己破産すると家族もブラックになる」という心配について、信用情報機関の側から確かめます。CICの公式のよくある質問は、「家族の借入状況を確認できますか?」に対して「ご家族の信用情報を確認することはできません」と答え、開示は本人からの申込みが原則だとしています。信用情報は一人ひとりの契約ごとに、本人を識別する情報(氏名・生年月日など)とひもづけて記録されています。確かめたCIC・JICC・全国銀行協会の公式ページが挙げる登録項目に、家族の情報を書き込む欄は見当たりませんでした。
したがって、配偶者や親が自分の名前で持っているカードやローンの記録は、あなたの破産では変わりません。家族が次にカードやローンを申し込むときに見られるのは家族本人の記録です。
家族に影響が出るのは、家族があなたの借入れの保証人になっているときです。破産法第253条第2項は、免責許可の決定は、債権者が「破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利」に「影響を及ぼさない」と定めています。千葉地方裁判所の説明書も、「免責の効果は保証人には及ばないので,保証人の支払義務はなくなりません」と書いています。
つまり、あなたの借金が免責で消えても、保証人の家族への請求はそのまま残り、債権者は家族に残りを求めることになります。家族の信用情報に記録が付くとすれば、それは家族自身が保証人として払えなかった場合の、家族自身の記録です。
住まいが破産者本人の持ち家なら、管財事件では破産管財人が売却し、明け渡すことになると松江地方裁判所は説明しています(住宅ローンがある家の扱いは債務整理と住宅ローンの記事で条文ごとに整理しています)。家族が自分のお金で手に入れた家族名義の財産は家族のものですが、先に書いたとおり、名義だけ家族で実質があなたの財産であれば対象になり得ます。申立書には同居家族と、配偶者・子・両親を同居・別居にかかわらず書く欄があり、家計の収支も家計を同じくする人の分まで書くよう松江地方裁判所は求めています。家族に知られずに申し立てる、という前提はここで崩れることが多い点も、知っておいてください。
出典:CIC「家族の借入状況を確認できますか?」(https://www.cic.co.jp/faq/detail/kaiji/kaiji01/002527.html)、CIC「CICが保有する信用情報」(https://www.cic.co.jp/confidence/posession.html)、JICC「信用情報の内容と登録期間」(https://www.jicc.co.jp/aboutus/credit-info/registration)、全国銀行協会(URLは前出)、破産法第253条、千葉地方裁判所の説明書Q22、松江地方裁判所の説明書(URLは前出)。いずれも2026年11月8日確認。
子どもの場面:奨学金の保証人と、養育費
子どもへの影響でいちばん具体的なのは、日本学生支援機構の貸与奨学金です。第一種奨学金(無利子)の保証の方法には、人が保証する「人的保証」と、保証機関に保証料を払う「機関保証」があります。
日本学生支援機構の公式ページは、人的保証の連帯保証人を「原則として父母またはこれに代わる人」、保証人を「原則として4親等以内の親族で本人及び連帯保証人と別生計の人」としたうえで、選任条件に「債務整理中(破産等)でないこと。」を入れています(連帯保証人は条件(5)、保証人は条件(6))。親が破産の手続中であれば、その親は子どもの奨学金の連帯保証人になれないということです。
| いつ | 日本学生支援機構の公式の記載 | 家計への影響 |
|---|---|---|
| 申し込むとき | 人的保証の連帯保証人・保証人は「債務整理中(破産等)でないこと」 | 別の親族を選ぶか、機関保証を選ぶ。機関保証は「一定の保証料の支払いが必要」で、連帯保証人・保証人は不要 |
| 借りている途中で親が破産したとき | 連帯保証人・保証人の「債務整理(破産等)」で選任できない場合は、人的保証から機関保証への変更が可能 | 変更する場合は「貸与始期に遡り、一括による保証料の支払いが必要」 |
| 第二種奨学金(有利子) | 機関保証制度のページは、保証機関が連帯保証し、連帯保証人・保証人は不要と説明 | 保証料がかかる |
見落としやすいのが、途中で変える場合の「貸与始期に遡り、一括」です。破産の申立てを考えている親で、子どもがすでに人的保証で奨学金を借りているなら、変更が必要になったときにまとまった保証料が一度にかかることを、家計の見通しに入れておく必要があります。
子どもの側から見ると、もう1つ大切な条文があります。破産法第253条第1項第4号は、免責されない請求権として、夫婦間の協力・扶助の義務、婚姻費用の分担、「子の監護に関する義務」、扶養の義務に関わるものを挙げています。離婚した親が払うべき養育費は、親が自己破産しても支払義務が消えません。破産する側にとってはデメリットですが、子どもにとっては守られる部分です。
出典:日本学生支援機構「第一種奨学金の人的保証制度」(https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/taiyo/taiyo_1shu/hosho/jinteki_hosho.html)、「人的保証から機関保証への変更(在学中)」(https://www.jasso.go.jp/shogakukin/saiyochu/todokede/hoshotype.html)、「第二種奨学金の機関保証制度」(https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/taiyo/taiyo_2shu/hosho/kikan_hosho/index.html)、破産法第253条。いずれも2026年11月8日確認。
記録の場面:信用情報と官報情報は何年残るか
「自己破産のデメリットは何年続くのか」と聞かれたとき、いちばん長く残るのはこの場面です。各機関の公式ページに書かれた期間は次のとおりです。JICCは契約日によって書き方が分かれているので、両方を載せます。
| 記録 | 公式に書かれた期間 | 数え始め |
|---|---|---|
| CIC(「異動(延滞・保証履行・破産)の有無」を含むクレジット情報) | 「契約期間中および契約終了後5年間」 | その契約が終了した日 |
| JICC 取引事実に関する情報(破産申立て等)・契約日2019年10月1日以降 | 「契約継続中及び契約終了後5年以内」 | 契約が終了した日 |
| JICC 取引事実に関する情報(破産申立て等)・契約日2019年9月30日以前 | 「当該事実の発生日から5年を超えない期間」 | 破産申立てなどの事実が起きた日 |
| 全国銀行個人信用情報センター 官報情報 | 「破産手続開始決定等を受けた日から7年を超えない期間」 | 破産手続開始決定などの日 |
読み方の注意は2つです。1つめは、CICと2019年10月1日以降に契約したJICCの記録は「契約が終了した日」から数えることです。破産の申立ての日や免責の日と、カード会社・貸金業者が契約を終了として記録する日は同じとは限りません。2つめは、銀行が見る官報情報は開始決定の日から7年で、ほかの記録が消えても銀行のローンやカードではこちらが残る期間があることです。自分の記録がいつ消えるかは、各機関に開示を申し込めば、契約ごとの日付で確かめられます。カードの申込みに当てはめた数え方は自己破産後クレジットカードはいつ作れるかで、消費者金融への申込みの順番は自己破産後に借りれる消費者金融の記事で扱っています。
なお、千葉地方裁判所の説明書は、破産後にお金を借りられない期間について「一般的に約5~7年と言われていますが,これは法律上の制限ではありません。お金を貸す側の判断になります。」と書いています。5年・7年は「その時点で必ず借りられる」日ではなく、「記録の上で過去の破産が見えなくなる」日です。
出典:CIC「CICが保有する信用情報」、JICC「信用情報の内容と登録期間」、全国銀行協会「全国銀行個人信用情報センターにおける個人情報の取扱いについて」、千葉地方裁判所の説明書Q17(URLはいずれも前出)。2026年11月8日確認。
二度目の自己破産:7年以内の免責不許可事由と、それでも許可される場合
デメリットとして見落とされがちなのが、「一度使うと、しばらく同じ手が使いにくい」ことです。破産法第252条第1項第10号は、次のどれかから7年以内に免責許可の申立てがあったことを免責不許可事由にしています。
- イ:免責許可の決定が確定した → その確定の日から
- ロ:給与所得者等再生の再生計画が遂行された → その再生計画認可の決定の確定の日から
- ハ:個人再生で、民事再生法第235条第1項の免責の決定が確定した → その免責の決定に関わる再生計画認可の決定の確定の日から
数え始めは「前回の申立ての日」でも「前回の開始決定の日」でもなく、イなら前回の免責許可の決定が確定した日です。信用情報の記録の数え始めとも違うので、混ぜないようにしてください。
第252条第1項は、10号のほかにも、浪費や賭博などで著しく財産を減らしたこと(第4号)、申立ての1年前から開始決定までに、支払えない状態を隠してうそで信用取引をしたこと(第5号)、うその債権者名簿を出したこと(第7号)、裁判所の調査で説明を拒んだりうその説明をしたこと(第8号)などを挙げています。千葉地方裁判所の説明書は、クレジットカードで商品を買ってすぐ安く転売・質入れした場合や、借入残高を偽って借りた場合を例に挙げています。
ただし、不許可事由があれば必ず免責されないわけではありません。第252条第2項は、不許可事由に当たる場合でも、裁判所は破産に至った経緯その他一切の事情を考えて、免責を許可するのが相当と認めるときは許可できると定めています(裁量免責)。千葉地方裁判所の説明書も「事情によっては,裁判所の判断で免責を許可する場合もあります」とし、大切なのは「裁判所に対して本当の事実を明らかにすること」だと書いています。資格の章で見たとおり、免責が得られなければ復権も第1号では起きません。隠すことは、借金と資格の両方を失う方向に働きます。
第253条第1項は、免責されても残る請求権を挙げています。税金など(第1号)、悪意で加えた不法行為の損害賠償(第2号)、故意・重大な過失で人の生命・身体を害した不法行為の損害賠償(第3号)、養育費などの家族の義務(第4号)、知りながら債権者名簿に書かなかった請求権(第6号)、罰金など(第7号)です。千葉地方裁判所の説明書も「税金や罰金は対象外」で、知りながら一覧表に書かなかった債務も同じだと注意しています。「借金が全部なくなる」と思って申し立てると、ここで思惑が外れます。
出典:破産法第252条・第253条、千葉地方裁判所の説明書Q19〜Q21(URLは前出)。2026年11月8日確認。
よく検索される質問
場面で違います。資格の制限は免責許可の決定が確定して復権するまで(破産法第255条)、転居の制限と郵便物の転送は破産手続が終わるまでです。信用情報は、CICと2019年10月1日以降契約のJICCが契約終了から5年、2019年9月30日以前契約のJICCが破産申立てなどの日から5年、銀行が見る官報情報が開始決定の日から7年です。次の免責が難しくなる期間は、前回の免責許可の決定の確定から7年です。
載りません。CICは家族の信用情報は確認できないと説明しており、信用情報は本人ごとの記録です。ただし、家族があなたの借入れの保証人になっている場合は、保証人の支払義務は免責後も残ります(破産法第253条第2項)。また、手続中の親は、子どもの日本学生支援機構の奨学金で人的保証の連帯保証人・保証人になれません(選任条件「債務整理中(破産等)でないこと」)。
解約返戻金は、破産手続開始の時の財産として破産財団に入るのが原則です(破産法第34条第1項)。管財事件では「加入している保険は全て解約されます」と松江地方裁判所は説明しています。一方で、裁判所は自由財産の範囲を広げることができ(同条第4項)、水戸地方裁判所の振り分け基準は解約返戻金を含む項目ごとの財産が20万円以上かどうかで線を引いています。まず、契約者貸付けを差し引いた解約返戻金の額を保険会社の書類で確かめてください。
多くの仕事には制限がありません。制限があるのは、警備員(警備業法第14条)、生命保険募集人(保険業法第279条)、宅地建物取引士(宅地建物取引業法第18条)のように、法律が「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」を欠格としている資格です。免責許可の決定が確定すれば復権するので、制限は手続の期間に限られます。会社の取締役は民法第653条により委任がいったん終了します。
戸籍には記載されないと松江地方裁判所の説明書が明記しています。同じ説明書によれば、選挙権・被選挙権も失いません。本籍地に通知が行くのは、免責許可決定がされないことが確定した場合です。
自己破産のデメリットを考えるときは、一覧の長さではなく、自分に当てはまる場面がどれかで見てください。資格の仕事をしているなら、免責が得られるかどうかが仕事の行方を決めます。解約返戻金のある保険を持っているなら、保険会社に今の解約返戻金の額を出してもらうことが最初の一歩です。家族が保証人になっている借入れがあるなら、免責の後も家族に請求が行くことを、申し立てる前に家族と共有しておく必要があります。子どもが奨学金を使う予定なら、保証の方法を人的保証にするか機関保証にするかを、手続の時期と合わせて決めてください。
反対に、家族の信用情報、戸籍、選挙権は、この手続で変わりません。必要以上に恐れて手続を先延ばしにすれば、その間の延滞の記録が積み重なっていきます。何が変わり、何が変わらないかを条文と公式の記載で分けておけば、決めるべきことはそれほど多くありません。

